自動車の耐用年数や計算方法など、自動車の減価償却の仕組みとは【税理士に聞く】

事業用に自動車を購入した場合は固定資産になるので、減価償却して費用計上することが可能です。この記事では、自動車を減価償却する時の基本的な知識や計算方法、注意するポイントなどについて、高崎文秀税理士に具体例を上げながらわかりやすく解説いただきます。事業用に自動車の購入を検討している方は、ぜひ参考にしてください。
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自動車は減価償却で経費にできる

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役員車や営業車など、事業用に購入した自動車は固定資産になります。固定資産とは、購入金額が10万円以上で、1年を超えて使用するために所有する資産のことをいい、事業用に購入した自動車や建物、パソコンといった備品などが該当します。固定資産は時間の経過とともにその価値が年々減少してしまいます。そこで、取得価額や品目ごとに定められた耐用年数をもとに価値の減少分(減価償却費)を算出して毎年費用計上し、貸借対照表上の資産を減額していきます。ですから、事業目的で自動車の購入を検討されている場合は、購入後は減価償却して経費として処理することが可能です。

自動車を減価償却する時のポイント

自動車の減価償却する際には、自動車の耐用年数、取得価額、新車か中古車かといった3つのポイントを押さえる必要があります。

自動車の耐用年数

耐用年数とは、その固定資産を取得した時から何年使えるかという「固定資産の利用可能年数」のことです。恣意性を排除し、税制の公平性を保つために、自動車の大きさや種類、用途などによって税務上の法定耐用年数が細かく定められています。例えば、新車の普通自動車の法定耐用年数は6年、軽自動車は4年と定められています。しかし、同じ普通自動車でも運送事業にあたるタクシーやレンタカーの場合は4年と違いがあるのです。

自動車の取得価額

取得価額とは、固定資産を購入するのに要した金額のことで、購入価格に付随費用を加えた金額のことです。自動車の購入には、自動車の本体代や付属品の購入費以外にも、納車費用などのさまざまな費用がかかります。
自動車購入に関連した費用は取得価額に含むべきものと、取得価額にしなくてもよいもの、費用に計上すべきものに分けられます。

<取得価額に含むべきもの>
自動車本体価格
付属品
納車費用
中古車の未経過自動車税
中古車の未経過自賠責保険料
<取得価額に含まなくてよいもの>
自動車環境性能割
検査登録、車庫証明などの法定費用
<経費処理すべきもの>
自動車税
自動車重量税
自賠責保険料
リサイクル資金管理料金
<資産計上すべきもの>
リサイクル預託金

新車か中古車か

新車と中古車では中古車の方が耐用年数が短くなります。減価償却費は耐用年数が短いほど経費として処理できる金額が大きくなるため、早く大きく減価償却したいと考えるのであれば、中古車の方メリットが大きいといえます。
法定耐用年数は新車を基準にしているので、中古車の耐用年数を知りたい場合は次の計算式に当てはめて算出しなければなりません。

<法定耐用年数の全部を経過している中古車>
法定耐用年数×20%

例えば、6年落ち以上の中古車(普通自動車)を購入した場合は次のようになります。
6年(法定耐用年数) × 20% = 1.2年

1.2年となりましたが、計算の結果が2年以内の場合は「2年」とみなすとされているため、耐用年数は2年です。

<法定耐用年数の一部を経過した中古車>
法定耐用年数 − 経過年数 + 経過年数×20%

例えば、2年8ヶ月落ちの中古車(普通自動車)を購入した場合、次のように計算します。
6年(法定耐用年数) − 2年8ヶ月 + 2年8ヶ月×20% = 3.8年

1年未満の端数は切り捨てすることになっているので、耐用年数は3年となります。

自動車の減価償却の計算方法

減価償却を計算する主な方法には、定率法と定額法があります。それぞれの計算方法の違いや実際の計算例を説明します。

計算方法には定率法と定額法がある

まず定率法とは、固定資産の残存価格を毎年一定の割合で段階的に減価償却処理する方法です。償却初年度が最も金額が大きく、その後は年々償却金額が減少していきます。定率法では次の計算式を用います。

<定率法の計算式>
減価償却費 = 未償却残高 × 定率法の償却率

算出した減価償却費が「償却保証額(取得原価×保証率)」を下回った場合は、その年度から終了年までは「改定償却率」を使って計算します。

一方、定額法では毎年一定額を減価償却処理していきます。定額法では次の計算式を用います。

<定額法の計算式>
減価償却費 = 取得原価 × 定額法の償却率

どちらの計算方法でも、残存価額が備忘価額である1円まで減価償却していきます。これらの償却率や保証率、改定償却率は耐用年数ごとに省令で定められているので参考にしてください。
(参照先:https://elaws.e-gov.go.jp/document?lawid=340M50000040015)

また、原則的に法人は定率法を用いて処理し、個人事業主は定額法を用いて処理するように定められています。しかし、現在の方法を採用して原則として3年以上経っている場合には、期限までに税務署に届出すれば減価償却方法を変更することが可能です。

減価償却計算例(定率法)

例えば、新車の普通自動車を500万円で期首に購入した場合、定率法を用いた減価償却は次の通りになります。

<定率法の計算式>
減価償却費 = 未償却残高 × 定率法の償却率

・法定耐用年数:6年
・償却率:0.333
・改定償却率:0.334
・保証率:0.09911

<償却保証額>
5,000,000円(取得原価) × 0.09911(保証率) = 495,550円

1年目
取得価額 5,000,000円
減価償却費 5,000,000×0.333=1,665,000円
残存価額 3,335,000円
2年目
未償却残高 3,335,000円
減価償却費 3,335,000×0.333=1,110,555円
残存価額 2,224,445円
3年目
未償却残高 2,224,445円
減価償却 2,224,445×0.333=740,740円
残存価額 1,483,705円
4年目
未償却残高 1,483,705円
減価償却 1,483,705×0.334(改定償却率)=495,557円
残存価額 988,148円
5年目
未償却残高 988,148円
減価償却 1,483,705×0.334(改定償却率)=495,557円
残存価額 492,591円
6年目
未償却残高 492,591円
減価償却 492,591−1=492,590円
残存価額 1円

自動車を減価償却する時の注意点

最後に、自動車を減価償却する際の注意点について説明します。

自動車の購入は決算月の翌月に合わせる

減価償却は一括で経費として計上することはできず、月割り計算して計上することになっています。そのため、期首に自動車を購入すれば12ヶ月分を減価償却費として計上できますが、12月末決算なのに11月に自動車を購入してしまうと、2ヶ月分しか償却対象となりません。減価償却は使用開始日からカウントされますので、購入を決算月の翌月に合わせると年内の経費多く計上できます。

下取りの車に所得税がかかることがある

個人事業主の方が買い替えなどで事業用の自動車を手放した時、売却益がでたら譲渡所得として申告が必要になります。自動車の売却益が50万円以下ならば、特別控除により課税されないことになっています。しかし、50万円を超える場合は所得税の課税対象となることを留意しておきましょう。

まとめ

事業用に自動車を購入すると固定資産になり、減価償却して経費として処理できます。しかし、自動車の種類や状態、用途によって計上できる経費に違いが生じます。また、購入時期によっては初年度に計上できる額が期待していた金額よりも少なくなることもあるので、購入タイミングにも留意してください。
事業用に自動車を購入する際は、税理士などの専門家に相談しながら、自社にとってベストな条件や購入タイミングを見極めて購入計画を立てましょう。

《解説》高崎文秀税理士事務所 代表税理士 高崎 文秀 https://ft-taxacc.com/

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